キャリアラダーを作る・作り直すときの進め方:各社が公開した手順と、移行で揉めないための決めごと
そだてる編集部| 公開

先に結論
- 作り直しは誰か 1 人の最優先の仕事にし、中身は人事ではなくエンジニアと EM が書く(CircleCI・Fournier)。
- 項目は広く集めてから、先に 1〜2 の段を書きながら似たものをまとめて絞る(CircleCI)。
- 書くのに約半年、試しの評価に 1 期をあて、その次の期から評価に使う(編集部の見立て)。
キャリアラダー(エンジニアの段ごとに期待する行動を書いた表)を作り直してほしい、と頼まれたとします。他社のラダーは検索すればいくつも読めます。けれども、何から手を付け、誰が書き、いつから評価に使えばよいかは、ラダーの中身を読んでも分かりません。
この記事は、ラダーを作った・作り直した会社が自ら公開した進め方を、手順の順に並べます。ラダーに何が書かれているかの比較はエンジニアのキャリアラダーの横断比較で扱いました。こちらは作り方と移し方です。
調べたのは 11 の会社・個人の公開記録 14 本です。海外は、進め方まで書いた 5 本(CircleCI・Etsy・Block・Rent the Runway・Camille Fournier)です。国内は、「キャリアラダー 作り方 エンジニア 策定 進め方」の検索(2026年10月19日)で上位に出た 2 本(クラスメソッド・フォースタートアップス)と、横断比較で読んだ改定の記録 4 本(メルカリ・LegalOn・アンドパッド・LayerX)です。これに関連する原典 3 本を足しました。表の「−」は「公開されていない」で、「やっていない」ではありません。
受け手の声
簡素なラダーが段の交渉を生んだ
Rent the Runway(米国の服のレンタルの会社)で Camille Fournier が最初に出したラダーは、Foursquare のものを基にした簡素なものでした。技術の力・伝える力といった項目ごとに、説明は 1 つか 2 つだけです。細部を少なくすれば、段の細かい言葉尻で交渉されにくくなると考えていました(Rent the Runway、2015年3月26日)。
「Boy was I wrong.」(とんでもない思い違いだった、の意)
すぐに、自分の段は正しいのかとエンジニアから議論を挑まれ、組織に不安と混乱が広がったと書いています。面接で候補者をどの段で採るかも、特に上の段で決めにくくなりました。そこでテックリードと EM(エンジニアリングマネージャー)と一緒に、より具体的に書き直しています。
古いラダーは無視された
CircleCI(ソフトウェアのテストと配布を自動で回すサービスの会社)は、2018年の初め、開発者 32 人で年内に倍にする計画のなかで作り直しに着手しました。旧い表(2018年12月の記事によれば 3 年前に作ったもの)は若手の段に偏り、すでに一部の開発者が届いた段で上が止まっていました。さらに、組織が重んじるようになった技能ともずれていて、そのために実際には無視されることが多かったと書いています(CircleCI、2019年2月28日)。
国内では、メルカリが評価に使い始めたあとも「もう少し具体的でないと考えづらい」という声が残ったと書いています(メルカリ、2021年3月8日)。LegalOn は、日々の指針としてはまだ根付いていないことを課題に挙げました(LegalOn、2023年8月4日)。
作り直しが揉める理由
ラダーの段は、採用・昇格・評価に直結します。Block は段を、面接で候補者にどの段の職を出すかの判断と、昇格の期の審査に使うと書いています(Block、2023年7月19日)。
段の文を変えると、昇格を目指して働いている人のゴールを動かすことになります。CircleCI は、ラダーを絶えず直すのはキャリアの成長のゴールを動かし続けることになり悪い考えだ、と書いています。Square も 2019年の版で、成長しようとしている人のゴールは動かしたくない、と書いていました(Square、2019年7月23日)。
作り直しで段が上がった人・下がった人の数や、給与をどう扱ったかを公開した会社は、今回の 11 の範囲では見つかりませんでした。
エンジニア組織での違い
中身を書くのは人事ではない
Fournier は 2025年、10 年間に少なくとも 2 回、別の会社でラダーを書き直したうえで、人事にすべてを任せないよう助言しています。専門性の定義は人事の仕事ではない、という理由です(Fournier、2025年5月28日)。
人事の役割が無いわけではありません。CircleCI では人事の責任者が、職業人として価値のある振る舞いを約 100 枚のカードに書いて持ち込み、項目の種にしました。エンジニア向けではない一般の項目です。他社の公開の表やチームで出した価値観と合わせて項目を選び、中身を書いたのは EM と Director の 2 人です。
技術の変化で文が古くなる
アンドパッドは、生成 AI のコーディングの進化で、1 年前に想定していた求められる能力が変わってきているとし、定義を更新し続けるものと位置づけています(アンドパッド、2025年11月21日)。作った時点で完成とは言えないので、直す周期を最初から決めておく必要があります。
手順 1: 誰が持つか
| 会社 | 持ち主と書き手 | 人数 |
|---|---|---|
| CircleCI | EM が片手間で始め、新任の Director が最初の大きな仕事として引き取った | 中心は 2 人 |
| Etsy | 段の違うエンジニアと EM のワーキンググループ | 4 人 |
| Block | ワーキンググループ(Eng Levels Working Group) | 謝辞に 11 人 |
| メルカリ | CTO の文書を何十人ものエンジニアが議論。Engineering Office が進行役になり、EM のコミッティーを作った | EM は十数名 |
| Rent the Runway | Fournier がテックリードと EM と書き直した | − |
| アンドパッド | エンジニア組織のマネジメント担当が進め、執行役員・部長・テックリードと意見交換 | − |
CircleCI の EM は、長引いた最大の理由を、自分が早朝・深夜・週末の片手間で進めていたことだと振り返っています。Director が引き取ってから進み、作り直しには約 8 か月かかりました。誰か 1 人の最優先の仕事にするよう勧めています。
手順 2: 何を作るかを先に合意する
CircleCI は、関係者が目的に合意するまでは、どの実装の試みも止まると書いています。明示的に決めたのは次の 3 つです。
| 決めたこと | CircleCI の答え |
|---|---|
| 今の姿を書くのか、目指す姿を書くのか | 両方の混ぜ合わせ。合意できたのは作業の半ばだった |
| 誰が対象か | SRE(サービスの安定稼働を受け持つエンジニア)も含める |
| 何に使うか | 第一は評価と成長の計画。第二は採用と社外への説明 |
Etsy も最初に目的をそろえ、草案作りと出来の評価に使う原則を 4 つ決めました。成長の支援・期待の統一・多様なキャリアの承認・偏りの抑制です(Etsy、2019年10月2日。原典は 2026年10月19日時点で開けず、Internet Archive の 2024年4月1日の保存で確かめました)。Block は原則の第一に、旧い段の本質的な意味を保つことを置き、原則の一部は始める前に、ほかは作業の途中で出てきたと書いています。
全社の等級とのつなぎ方も、最初に決めることの 1 つです。メルカリは、ラダーを作ったあとで全社のグレード定義が刷新されて整合が崩れ、2 年目に全社の定義をエンジニア向けに分解した Key behaviors に当てはめて構成し直しました。それまでエンジニア組織だけが独自の評価記入フォーマットを使っていましたが、全社と同じものを使えるようになっています(メルカリ、2023年9月8日)。
そもそも今作るかも問われます。LayerX は、策定だけでも軽くなく、運用が始まると社員の時間を取られるとして、本当に今必要かを考えました。進めると決めたうえで、ベータ版を社内に出すときに、課題と背景・社員数と 1 年以内の入社者の割合・プロダクトのロードマップと人員計画・ラダーの意義などを一緒に示しています(LayerX、2023年11月7日)。クラスメソッドの人事は、職務の要件が頻繁に変わる仕事や、同じ職務でも担当者で範囲が大きく違う場合は、ラダーを整備しても役立てにくいと書いています(クラスメソッド、2024年2月6日)。
手順 3: 段の枠を先に決める
CircleCI は中身を書く前に、段ごとの責任の範囲を決めました。
| 段 | まとまり | 範囲 |
|---|---|---|
| E1 | 仕事をこなす | タスクの中 |
| E2 | 仕事をこなす | プロジェクトの中 |
| E3 | 仕事をこなす | チームの中 |
| E4 | 影響を広げる | チームへ |
| E5 | 影響を広げる | 関係する複数のチームへ |
| E6 | 影響を広げる | エンジニア部門へ |
LayerX は、すべての項目がまだ詳しく書かれていない段階でも分かるように、「高いグレードに求めること」(不確実性が高いことを任せられること)という大枠を先に示しました。アンドパッドは職種を IC(管理職ではなく技術で貢献する道)・Manager・Director の 3 つから始め、必要に応じて広げる方針をとっています。
段の数について、Fournier は上の段より若手の段を多めに置くよう勧めています。若手を採り続けている前提で、よい若手は早く学び、最初の数年で進歩を見たいからです。職種によっては段の途中から始まる・途中で終わるラダーがあってよい、とも書いています。
手順 4: 項目を広げてから絞る
1 つの段を先に書く
CircleCI は、すべての項目について、先に 1 つの段だけを書くことを強く勧めています。同社は E3(仕事をこなす段の最上段)と E4(影響を広げる最初の段)の 2 段を先に書きました。段ごとの細かな差を言葉にする前に、項目が何を指すかがそろうからです。
1 つの段を書くと、同じ振る舞いを指す項目が見つかります。CircleCI は Self Starting と Delivery Accountability を 1 つにまとめるなどして、書き始めたときにほぼ 50 あった項目を 27 に絞りました。最初は広く集め、あとでまとめて削るほうがよいとも書いています。
| 会社 | 広げた段階 | まとめた形 |
|---|---|---|
| CircleCI | 約 100 枚のカードや他社の表から集め、書き始めた時点でほぼ 50 | 27 |
| メルカリ | CTO の文書に約 20 のコンピテンシー | 似たものをまとめ、3 つのバリューにつないだ 9 つの Engineering Principles |
| Etsy | − | 5 つの領域。どの段も 3〜5 の期待で説明できる形 |
| アンドパッド | − | 約 200 項目(各職種 20 項目前後)、5 段階 |
Etsy は、集めた意見が、重複・不要・紛らわしい中身を削るのに役立ったと書いています。
先に書く段は、会社によって向きが違います。CircleCI は中堅の境目の E3・E4 でした。フォースタートアップスは、まず若手(アソシエイト / シニアアソシエイト)のためのラダーを定義しています(フォースタートアップス、2025年10月1日)。
絞るのは項目の数で、詳しさではない
Rent the Runway の最初のラダーは、各項目の説明が 1 つか 2 つでした。CircleCI が絞ったのは項目の数で、残した項目は全段を埋めています。項目を減らすことと、各段を短く書くことは別です。
Fournier は、主観的な言葉(increasing complexity・large systems など)は避けきれないが、使うところに注意し、可能な限りおおまかに測る手がかりを添えるよう勧めています。表の形のラダーに長文の説明を添えると、公開しなくても、箇条書きでは見落とすことに気づけるとも書いています。一方 Etsy は、2 回以上カンファレンスで話した、のような数で測れる書き方を意図的に避けました。役割やチーム、個人の事情によって機会が大きく限られるからです。
推敲は最後にまとめる
CircleCI は、残りの段を埋める段階まで文言の推敲をしないよう勧めています。気づいた直しは控えておき、最後にまとめて当てています。
手順 5: 意見を集め、試す
| 会社 | 意見の集め方 | 試し方 |
|---|---|---|
| CircleCI | エンジニアの全体会でのワークショップ、全段の IC・マネージャー・人事のフォーカスグループ(少人数で意見を聞く場) | 作る途中で試しの評価。マネージャーと模擬の自己評価をする方法も挙げる |
| Etsy | アンケート、自由記述、1 対 1 の聞き取り、第三者の文言の監査。出す前に各組織の長全員の同意 | 社内に出し、当面はキャリアの話し合いの参考に |
| メルカリ | ドキュメントへのコメントで何十人もが議論 | プロジェクトのメンバーと募った志願者で全段に点を付ける方式を試し、運用を変えてから、メルカリ JP のエンジニア全員を対象に旧い評価と並べて評価 |
| アンドパッド | 全エンジニア向けの説明会を複数回 | 2025年上期を試しの運用に |
| LayerX | ベータ版を社内に出してコメントを受け付け | 2023年10月から一部の Role で仮運用 |
CircleCI は、EM と Director の 2 人で書き、VP の承認を得て最終版として出すという案は、自分たちには考えられなかったと書いています。
メルカリの試しでは、全段に点を付ける方式は、全文を読むのに 1 時間以上かかる人がいるなど負担が大きく、自分の段を中心に 1 つ上の段も見る運用に落ち着きました。そのうえで行った全員での並行の評価では、8 割以上が評価し、意見を返しています。
手順 6: 評価の期とどう合わせるか
| 会社 | 評価に入れた時期 | 入れ方 |
|---|---|---|
| Etsy | 2018年5月に社内に出し、次の評価の期から | 期の途中では評価の手続きを変えなかった |
| メルカリ | 並行の評価の、次の評価から | 旧い評価と差し替えた |
| アンドパッド | 2025年下期から正式に | 上期の試しの運用のあと |
| CircleCI | 2018年12月の公開の時点で 4 か月以上、目標設定と評価に使っていた | 使い始めて 6 か月後にチームで見直す計画 |
| LegalOn | 2022年10月から。2023年8月の時点で評価は 1 回 | − |
| LayerX | 評価と直結させない | 目標達成と能力開発の道しるべとし、EM とメンバーが検討するときのコミュニケーションツールとして使う |
| フォースタートアップス | 2025年9月29日の時点では、自社のグレード・等級から切り離して設計 | 目標設定では Must ではない。上長とメンバーとの目標設定や 1on1、自身の振り返りで使う |
Etsy は、評価の期の途中で成功の測り方を変えないことが決定的に重要だったと書いています。出したあとは昇格の手続きをラダーに合わせ、マネージャーに、候補者が新しい段の期待を所定の期間満たしてきたことを書かせています。
改定の周期も評価の期に合わせています。メルカリはラダーを GitHub(ソースコードを管理するサービス)で管理し、改善を半年に一度出しています。更新が多いと評価の期間中に基準が変わる混乱が起きることと、全社の評価基準とすり合わせる必要があることが理由です。
反対の選び方もあります。メルカリは最初に評価で使うと決めました。評価の軸が変わることが、文化を変えるうえで最も影響が大きいからです。ただし差し替える前に、上の並行の評価を挟んでいます。LayerX は逆に、評価と直結させず柔軟に運用しながら進化させるのがよいとしています。
手順 7: 旧い段からどう移すか
公開されている移し方の原則は、今回の 11 の範囲では Block の 1 行です。
「An L6 in the old levels is an L6 in the new levels.」
旧い L6 は新しい段でも L6 で、目的は要件を明確にすることで、ゴールを動かすことではない、という宣言です。Block は、旧版の、各段が下の段の基準をすべて含む作りが段を分かりにくくしたとして改め、段の基準は全部を同じように満たす必要はなく、おおむね満たしていることを示せればよいとしました。昇格の期のたびに意見を求め、書かれていない期待が入り込まないよう不確かな部分を明確にしていくとも書いています。
誰の段が付け替わったか、付け替えで給与がどうなったかは、Block を含め、今回の 11 の範囲ではどこも公開していません。
社内に出す前に書いておく約束
ここからは編集部の提案です。公開例から、移行で揉めそうな点を、社内への約束の文にしました。効果を確かめた記録はありません。
| 約束 | 文の例 | 元にした原典 |
|---|---|---|
| 段の意味 | 今の段の意味は変えません。今の L4 の人は新しいラダーでも L4 です | Block |
| 使い始める時期 | 新しいラダーを評価に使うのは、試しの評価の期の次の期からです。それまでは今の基準で評価します | Etsy |
| 試しの評価 | 次の期は、今の評価と並べて新しいラダーでも評価し、結果は処遇に使いません | メルカリ |
| 昇格との関係 | ラダーを満たしても昇格は約束しません。昇格は組織の必要でも決まります | Fournier・LayerX |
| 直す周期 | 意見はいつでも受け付け、直すのは半年に一度、評価の期の境目だけです | メルカリ・CircleCI |
もう 1 つ、公開例が無いのに先に決めておくべき問いがあります。新しいラダーで読むと、今の段より下に見える人が出たときにどうするかです。Block の宣言は段の意味を変えないというものです。編集部は、段はそのままにし、下に見える原因になった文のほうを直すことを勧めます。この扱いを出す前に決め、EM が 1on1 で同じ答えを言えるようにしておきます。
1on1 での答えの例(編集部の提案です): 段は今のままです。新しいラダーの文で、今の段に届いていないように読める所があれば教えてください。持ち主に渡して、次の見直しで文を直す材料にします。
EM が聞き取って持ち主に渡し、人事が件数を数えます。この件数が、下の測り方の表の 1 行目(段をめぐる異議や問い合わせの人数)になります。
計画表
評価の期が半年の会社を想定した、仮の目安です。作成の期間が公開されているのは CircleCI(約 8 か月)・LegalOn(2022年春の立ち上げから 10 月の刷新まで約半年)・アンドパッド(試しを含め 1 年あまり)の 3 社だけで、各行の期間の根拠の記録はありません。規模の手がかりは、CircleCI が着手したときの開発者 32 人と、アンドパッドの 100 名を超える開発組織です。LegalOn は、刷新の前に開発組織がもうすぐ 100 名という規模でした。
LegalOn は 2022年春の立ち上げから 2022年10月の刷新まで。棒は 6 か月で描いた。
アンドパッドの「1 年あまり」は 2025年11月21日の記事の時点までのプロジェクトの期間で、2025年上期の試しの運用を含む。棒は 12 か月で描いた。
Etsy・Block・Rent the Runway・メルカリは、作成にかけた期間を公開していないので入れていない。
出典: 本文「計画表」
| 順 | すること | 誰が | 仮の目安 |
|---|---|---|---|
| 1 | 持ち主を 1 人決める。目的・対象・用途の順位を合意する | CTO が持ち主を 1 人(EM か技術の部長)決める。人事は全社の等級とのつなぎを受け持つ | 1 か月目 |
| 2 | 段の枠と範囲を決める | 持ち主と EM | 2 か月目 |
| 3 | 項目を広く集め、1〜2 の段を書きながら絞る | 持ち主と EM・テックリード | 3〜4 か月目 |
| 4 | 残りの段を埋め、最後にまとめて推敲する | 同上 | 5〜6 か月目 |
| 5 | 全段の代表から意見を集め、上の約束の文を出す | 持ち主と人事 | 6 か月目 |
| 6 | 1 つの評価の期を試しの評価にあてる | 全 EM。人事は試しの評価のあとに、読むのにかかった時間と参加した人の割合を集める | 7〜12 か月目 |
| 7 | 次の期から評価に使い、半年後に見直す | 持ち主 | 13 か月目から |
合わせると、6 か月で書き、次の半年で試し、13 か月目から評価に使う計算です。書く 6 か月は LegalOn の約半年・CircleCI の約 8 か月と、試しを含めた 12 か月はアンドパッドの 1 年あまりと並びます。
編集部の見立て
書くのは 1〜2 の段から、出すのは意見を集めてから、評価に使うのは試しを 1 回挟んでから、と考えます。
根拠は 3 つです。
- 先に 1〜2 の段を書くと項目がそろい、絞れます。CircleCI は 2 段を先に書きながら、ほぼ 50 を 27 にしました
- 評価の期の途中で基準を変えないことは、Etsy もメルカリも理由を書いて守っています。CircleCI と Square は、ゴールを動かすことへの警戒を書いています
- 書いた人には見えない負担が、試しで見つかっています。メルカリは全文を読むのに 1 時間以上かかる人がいると知り、運用を変えました
一方で、全段をそろえてから出す立場にも根拠があります。CircleCI は先に 2 段を書きましたが、最終版として出したのは全段を埋め、フォーカスグループで意見を集めたあとでした。Etsy も出す前に各組織の長全員の同意を得ています。一部の段だけを先に社内に出した公開例は、今回の 11 の範囲ではフォースタートアップス(若手の段から)だけです。
反対の根拠
簡素にしすぎた例(Rent the Runway)、最初から評価に使った例(メルカリ)、数で測る書き方を避けた例(Etsy)は、手順 4 と手順 6 で見たとおりです。ほかに次の 2 つがあります。
- 成果で書くと育成で使いにくい: LegalOn は成果・振る舞いで書くように変えたことで、採用と育成では使いにくくなった面があると書いています
- ラダーそのものへの逆風: Fournier は、業界は反動の時期にあり、多くの会社が再びフラットな組織を試しても驚かないと書いています。そのうえで、この仕事は重要だとしています
うまくいっているかの測り方
数えるのは、1 回の評価の期ごとです。合図は編集部が仮に置いた目安で、根拠の記録はありません。
| 見るもの | 誰が | 合図(仮の目安) | 元にした事例 |
|---|---|---|---|
| 段をめぐる異議や問い合わせの人数 | 人事が評価のあとに数える | 試しの評価で 2 人以上から出た段の文は、具体的に書き直す | Rent the Runway |
| 自分の段と 1 つ上の段を読むのにかかった時間 | 人事が試しの評価のあとに聞く | 1 時間を超えた人が半数を超えたら、項目を減らす | メルカリ |
| 試しの評価に参加した人の割合 | 人事 | 8 割に届かなければ、評価に使うのを 1 期遅らせる | メルカリ(8 割以上) |
| 昇格の資料がラダーの期待を引いているか | 人事が昇格の資料を読む | 期待を引いていない資料があれば、書いた EM と話す | Etsy |
| 改定の提案の件数 | 持ち主 | 半年の見直しの時点で 0 件なら、読まれているかを 1on1 で確かめる | メルカリ・CircleCI |
キャリアの機会の見え方は、作る前に一度アンケートで聞いておくことを勧めます。Etsy は全社アンケートで意味のある改善が見られたとしていますが数値は出しておらず、メルカリの評価の満足度(2020年8月、10 段階で 6 以上が約 9 割・平均約 8)にも、作る前との比較はありません。
確かめられなかったこと
- 旧い段から新しい段へ付け替わった人の数と、段が下がって見える人の扱い(Block は原則だけを公開)
- 作り直しで給与が変わった人がいたか、どう扱ったか
- Etsy・Block・Rent the Runway・メルカリが作成にかけた期間(メルカリは 2019年ごろ着手とだけ書いている)
- どの会社も、作成にかけた工数(時間)
- 作り直しのあとに段の交渉や昇格の不服がどれだけ減ったかの数値
- フォースタートアップスのラダーの段数・項目と、運用を始めたあとの結果
出典
- CircleCI: 7 steps to building an engineering competency matrix、2019年2月28日 / Why we re-designed our engineering career paths at CircleCI、2018年12月11日
- Etsy: Engineering Career Development at Etsy、2019年10月2日(Internet Archive の 2024年4月1日の保存で確認)
- Block: Square's Updated Growth Framework for Engineers and Engineering Managers、2023年7月19日
- Square: Square's Growth Framework for Engineers and Engineering Managers、2019年7月23日
- Rent the Runway: Sharing Our Engineering Ladder、2015年3月26日(ページの表示は 3 月 26 日だけで、年は Fournier の 2025年の記事による)
- Camille Fournier: 10 Years of Engineering Ladders、2025年5月28日
- メルカリ: 会社の文化を言語化すると何が起こるのか。Engineering Ladderの作成プロセスとその結果、2021年3月8日
- LegalOn Technologies: LegalOn Technologies のエンジニアグレード評価基準を公開します、2023年8月4日
- アンドパッド: エンジニア評価制度を再設計した1年の軌跡とこれからのチャレンジ、2025年11月21日
- LayerX: Engineering Career Ladderを作るときに気をつけたこと 其の一、2023年11月7日
- フォースタートアップス: キャリア開発と能力開発(エンジニア向け)、2025年10月1日
- クラスメソッド: キャリアラダーで特定の職種グループにおけるステップアップのはしごを明示する、2024年2月6日



