そだてる
AI時代

生成 AI が書いたコードを新人が理解しているかをどう確かめるか:各社の確かめ方と評価の物差し

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先に結論

  • 確かめ方まで公開していた 5 社は、どこもコードが動いたかだけで終わらせず、本人に答えさせている。口頭で聞く(TOKIUM・フューチャー)、PR に問いを投げる(GMO ペパボ)、テストを先に書かせて自分でレビューさせる(ディップ)、説明できるかを S〜C の自己評価で振り返らせる(Speee)。
  • ただし記録はどれも研修期間中のもので、配属後の確かめ方や、評価制度・等級を AI 前提で書き換えた記録は、調べた範囲では公開されていなかった。物差しとして使えるのは、研修の目標とルーブリックの言葉まで。
  • 編集部の提案は、配属後の PR の説明欄に「なぜ」を問う 3 問を毎回書かせ、口頭の掘り下げは新人 1 人につき週 2 本を選んで 1 本 10 分で行うこと。最初の 3 か月は答えられた割合と差し戻しの理由を記録し、半期の評価面談では段階をそのまま点数にせず、伸びを話す材料に使う。

来年 4 月に新卒が配属されるチームでは、AI コーディングツールを使わせることがもう前提になりつつあります。研修でどう使わせるかは、各社の方針を AI を新人に使わせるか、使わせないか で並べました。この記事はその次の問いを扱います。使わせると決めたあと、新人が書いたコードを本人が理解しているかを、何で確かめるかです。

「AI コーディング 新人 育成」などで検索すると(2026 年 10 月 10 日、編集部が確認)、上位には個人の意見と研修会社の宣伝が並びます。企業が確かめ方や評価の物差しをどう変えたかを並べたものは見つかりませんでした。

この記事では、各社が自分で公開した研修の記録から、確かめ方まで書かれていた 5 社を比べます。最初に断っておくと、5 社の記録はどれも研修期間中のものです。配属後にどう確かめているかを公開した記録は、調べた範囲(索引の 56 社と、この記事の出典)では見つかりませんでした。そこで、研修の型を配属後のレビューに移す部分は、編集部の提案として分けて書きます。

先に言葉を短く説明します。

受け手の声

まず、新人を受け入れる側と、新人自身が何を書いているかを並べます。

誰の記録か書いていること出典
OJT を担当した 1,004 人(研修会社の調査、2026 年 3 月)担当する新卒・若手(入社 1〜3 年目)の 9 割が業務で生成 AI を使っている。AI で作ったコードの課題の 1 位は「出力されたコードの仕組みや根拠を本人が理解していない」で 61.4%(n=904)。指導やコードレビューにかかる時間は、「大幅に増加した」26.1% と「やや増加した」51.8% で、計 77.9% が増加と答えたジョブサポート
同じ調査の、バグやエラーのときの新卒・若手(入社 1〜3 年目)の反応1 位「エラー文を自分で読まず、やみくもに AI に再質問を繰り返す」46.5%、2 位「AI の出力なのでわからない」と根拠を AI に丸投げする 45.8%(n=904)同上
DeNA の新卒チーム自身(2025 年 11 月)Cursor の Agent に頼って最初のスプリント(期間を区切った開発の単位)の成果を最大化しようとした結果、PR を出した本人が AI の書いたコードの意図を説明できず、レビューが形骸化したDeNA Engineering
ジーニーの 2025 年度の受講者AI に生成させたコードをメンバーにレビューしてもらい、「責任分離が不適切」(部品ごとの役割の分け方がよくない)と指摘されたジーニー

ジョブサポートの調査は、外部研修を販売している会社が行ったものです。調査の対象は、直近 2 年以内に入社 1〜3 年目のエンジニアの OJT を担当したと答えたモニターで、PRIZMA のインターネット調査です。参考として読んでください。

DeNA の新卒チームは、レビューできる人が限られていたので、レビューが滞ったことも挙げています。

理解が見えなくなる理由

編集部の見立てでは、AI を使うと、書けたことと分かったことが、同じ成果物の上では区別できなくなります。動くコードは、本人が理解して書いても、理解しないまま生成させても、見た目は変わりません。TOKIUM の受講者も、AI に書かせたコードを「動いているからヨシ!」で流していると、メンターの口頭のチェックで見抜かれると書いています(TOKIUM)。

この差を測った実験があります。Anthropic が 2026 年 1 月に公開した無作為化実験です。

項目内容
参加者主にジュニアの開発者 52 人。課題に使う Python のライブラリ(Trio)は全員が初めて
理解度のクイズ(課題の直後)AI を使った群は平均 50%、手で書いた群は 67%。差がもっとも大きかったのはデバッグ(壊れたコードの原因を見つけて直すこと)の問題
作業時間AI を使った群が平均で約 2 分早かったが、統計的に意味のある差ではなかった
使い方による差コードを任せきった人、デバッグを AI に頼った人のクイズの平均は 40% 未満。概念の質問だけに AI を使った人、生成させたあとに説明を求めた人は 65% 以上

出典: Anthropic

AI を使うかどうかより、使い方で差が出ています。ただしこの実験は 52 人で、課題の直後のクイズだけを見ています。Anthropic 自身も、直後の成績が長い目で見た技能の伸びを予測するかは分からないと書いています。

エンジニア組織での違い

上の記録で理解の差が出た場所は、レビューと不具合の対応でした。DeNA では理解の差がレビューに出て、レビューが滞りました。ジョブサポートの調査で増加したという答えが多かったのは、指導とコードレビューにかかる時間です。Anthropic の実験で差がもっとも大きかったのは、デバッグでした。

ここからは編集部の見立てです。エンジニアの仕事では、コードが動いてテストが通れば、理解していないことはしばらく表に出ません。表に出るのは、レビューで「なぜ」を聞かれたときと、不具合が起きて自分で直すときです。ここから 2 つのことが言えます。理解は成果物を見ても確かめられず、本人の説明と、変えたら何が起きるかの予測で確かめるしかないこと。そして確かめる場所は、新人が毎日通るレビューに置くのがいちばん無理がないことです。

5 社の確かめ方

索引の 56 社の記述と原典を読み、理解の確かめ方まで原典で確かめられたのは次の 5 社でした。

会社(年度)確かめる場面方法誰が頻度・時点AI の扱い合否への使い方
TOKIUM(2026)1 か月の Rails の研修口頭で理解度をチェックメンター全 6 段階のマイルストーンごとコーディングには使わない。質問と壁打ちは可答えられないと再チェック
GMO ペパボ(2026)Rails チュートリアル(5.5 営業日)PR に問いを投げる受講者同士、そのあと講師PR ごとClaude Code とともに実装−
ディップ(2026)2 週間の研修の Day 4 と、2 週目の配属先での OJTテストを先に書き、AI の出力を自分でレビューして PR を出す本人、メンターDay 4 と Day 6〜9Claude Code などで実装−
Speee(2026 公開)研修教材の最終課題発表・自己評価・相互レビュー本人、受講者同士、講師最終課題実装の生成は禁止。説明と理解の検証には推奨自己評価に S〜C のルーブリック(合否への使い方は書かれていない)
フューチャー(2020・2023)新人研修の IT カリキュラム1 対 1 の口頭試問研修リーダーカリキュラムの節目ごと公開されていない合格しないと次に進めない

「−」は、原典に書かれていないものです。書かれていないことは、やっていないことではありません。

TOKIUM はマイルストーンごとに口頭で聞く

TOKIUM の 2026 年度のプロダクト本部研修は、1 か月かけて Rails で Todo アプリを作ります。全 6 段階のマイルストーンがあり、段階をクリアするたびに、メンターと口頭で理解度をチェックします。受講者は、実際に聞かれた質問を 3 つの型に分けて紹介しています(TOKIUM、2026 年 6 月、26 卒の受講者が執筆)。

問いの型実際に聞かれた例
コードの中身を追えているかlocalhost:3000/hello?name=xxx にアクセスしたとき、Rails の中で何が順番に呼ばれるか
なぜそう書くのかrender と redirect_to は何が違い、どう使い分けるか。null: false は何のために書くか
ふだん決まり文句で済ませている裏側rails server を実行すると何が起き、どこのプロセスが動くか

受講者は「1 問ずつ深掘りされるので、生半可な理解のまま AI に丸投げするのは、正直かなりリスキー」と書いています。そのため、ラーニングモードがあっても、自主的に AI でのコーディングを控える人が多かったそうです。

同じ記事には、経験者の同期 1 人が、変更の差分から「なぜそうしたか」を問う質問を作り、説明できるまでコミット(変更を記録として確定すること)させない Claude Code のスキルを作って配った話も出てきます(会社の決まりではありません)。

GMO ペパボは PR に問いを投げる

GMO ペパボ の 2026 年度の研修では、8 人の受講者が Rails チュートリアルを Claude Code とともに進め、PR を立てました。PR はまず受講者同士でレビューし、そのあと講師がレビューします。講師は、AI が書いて動いただけの状態にならないよう、「このパターンだったらどうなる?」「どうしてこの実装になっているんだろう?」と問いを投げました(GMO ペパボ、2026 年 8 月、講師陣が執筆)。

AI エージェントの開発研修でも、最終発表の評価軸の 1 つを、どんな入力になぜそのツールを使い、なぜその応答になるのかを説明できること(了解性)にしました。

ディップはテストを先に書かせ、配属先でもメンターに確かめる

ディップ の 26 卒研修は 2 週間で、新卒は 6 人です。1 週目の Day 4「ディップ流 AI-DLC 実践」(AI-DLC は、AI を前提にした開発の進め方の呼び名)で、テストを先に書き、AI に実装させ、テストが通るかを確かめ、通らなければ指示し直す演習をします。AI が生成したコードを本当に正しいかセルフレビューし、テスト付きの PR を出すところまでが目標です(ディップ、2026 年 5 月)。

目指す姿は「AI と一緒に開発する」のではなく「AI の出力に責任を持てる」エンジニアです。セルフレビューのチェックリストには、メモリリーク、SQL インジェクション(入力に細工をしてデータベースを不正に操作させる攻撃)、エッジケース(境目や想定外の入力)への対応が挙がっています。

2 週目は配属先のチームに入り、メンターの隣で実際のコードに触れます。5 社の記録のうち、配属先の実際のコードで理解を確かめているのはここだけです。

日理解を確かめる場面
Day 6最初の課題に対するテストケースを設計し、メンターに「このテストで十分か」を確認する
Day 7レビューの指摘を読み、「なぜこの指摘なのか」をメンターに質問して理解する
Day 9配属先のシステムを、CPC(クリック課金)の仕組み、アーキテクチャ、リポジトリの順で 1 人ずつ説明し、講師から意見をもらう

困ったときの決まりもあります。15 分考え、Slack で質問し、それでもだめならメンターに聞く。本配属は 5 月 1 日で、この 2 週間は研修の一部です。

Speee は説明できるかを自己評価の段階に入れる

Speee が 2026 年に GitHub で公開した研修教材は、AI を実装者ではなく解説者・壁打ち相手と位置づけ、コードの生成を禁じ、説明と理解の検証には使うよう勧めています。期待する状態には「コードを書いた理由を説明できる」「他人のコード(AI 含む)を評価できる」を挙げています(Speee の教材)。

最終課題は、発表・自己評価・相互レビューです。目標は「動くものを作った」状態から「説明できる・評価できる」状態へ進むことです。受講者が自分で付ける自己評価のルーブリックは、次の 4 段階です(表のトレードオフは、一方を取ると他方を諦める関係のこと。最終課題)。

段階状態
S深い理解がある。設計の意図を説明できる。トレードオフを語れる。抽象化の判断が適切
A基本的な理解がある。構造を説明できる。実装に一貫性がある
B動作するものは作れている。一部説明が曖昧
C理解が浅い。説明できない。レイヤーが混ざっている

自己評価の項目は、技術理解・設計力・実装品質・説明能力・トレードオフ理解の 5 つです。受講者同士の相互レビューは、これとは別のレビュー用チェックリストで行います。ルーブリックを合否に使うとは書かれていません。S〜C にかかわらず、安全上の必須評価(既知の脆弱性を説明できる、など)を満たさなければ提出を完了にしない、という決まりだけがあります。

フューチャーは書き換えたら何が起きるかを聞く

フューチャー の新人研修では、筆記試験に合格したあと、研修リーダーが試験官を務める口頭試問に合格して初めて、次のカリキュラムに進めます。狙いは「とりあえず書いたら当たった」ではなく、本質的な理解の確認です(フューチャー技術ブログ、2023 年 3 月)。新入社員は年間 100 名以上です(2023 年の記事の時点)。

口頭試問は 1 対 1 です。本人が正解したコーディングテストの一部を取り出し、「コーディングテストで◯◯と書かれていた部分を、△△に書き換えると、プログラムの動きはどう変わりますか?」と聞きます。プログラムを実行すること以外は、何を調べてもかまいません。基準は「相手に説明できるほど理解している」ことです(フューチャー公式 note、2020 年 4 月)。

この方法は AI が広まる前からのものです。いま新人に AI を使わせているかは公開されていません。それでもこの記事で取り上げたのは、調べてよい条件の下でも、動いただけの人は答えにたどり着けない問い方だからです。原典は、コーディングテストで「プログラムが動いちゃった」だけの人は、何を聞かれているのかが理解できず、どれだけ調べても正解にたどりつかないと書いています。

確かめ方の 4 つの型

5 社を、何に答えさせているかで分けると、次の 4 つになります(編集部の整理です)。

型答えさせること5 社の例向く場面
なぜを聞くその一行をなぜそう書いたかTOKIUM、GMO ペパボ毎日の PR
変えたらどうなるかを聞く条件や書き方を変えたときの動きフューチャー、GMO ペパボの「このパターンだったら」節目の確認
先に正解の形を書かせる何が正しいかを、AI に書かせる前に決めるディップのテストの先書き新しい機能の実装
説明を振り返りに入れる自分の作ったものを人に説明し、説明できたかを段階で振り返るSpeee の発表と自己評価のルーブリック研修や四半期の区切り

表の外に、答えさせる前に一緒に書いて理解をそろえる形もあります。DeNA の新卒チームは振り返りで、不慣れな技術は、知見のあるメンバーがモブプログラミング(全員で 1 つの画面を見ながら書く)やペアプログラミング(2 人で 1 つのコードを書く)を通じて実装しながら知識を共有し、理解の水準をそろえるのが効果的だったと書いています(DeNA Engineering)。会社の決まりではなく、新卒チーム自身の振り返りです。

何をできるようになったと見なすか

評価制度・等級・キャリアラダーを AI 前提で書き換えたと公開した会社は、調べた範囲では見つかりませんでした。物差しとして使えるのは、研修の目標に書かれた言葉までです。それを並べ、確かめるときの問いに変えたのが次の表です。問いの列は編集部の提案です。

会社物差しの言葉(原典の要約)確かめるときの問い(編集部の提案)
GMO ペパボAI の出力の表面をなぞるのではなく、背後の技術体系を理解し実践している。リリースした先の運用まで責任を持てるこの変更が本番で壊れたら、どこを見て、どう戻すか
ディップAI の出力に責任を持てる。AI の出力をレビューし、テスト付きの PR を出せるこのテストで足りない入力は何か
Speeeコードを書いた理由を説明できる。他人のコード(AI 含む)を評価できるほかの書き方と比べて、なぜこれにしたか
MIXI生成されたコードや SQL、設計の妥当性を判断するための基礎知識や設計力この SQL が遅くなるのはどんなときか
サイバーエージェントプロダクトの品質を担保する判断力何を確かめたから、出してよいと判断したか

出典: GMO ペパボ、ディップ、Speee、MIXI(2026 年 7 月)、サイバーエージェント(2026 年 6 月)

配属後のレビューに移す形

ここからは編集部の提案です。配属後に確かめた公開記録は無いので、効果を示す数字もありません。5 社の研修の型を、配属先のふだんの PR に移すとこうなる、という案です。

PR の説明欄に足す 3 問

新人の PR の説明欄に、次の 3 問を足します。3 問は PR ごとに毎回、本人が書きます。文言の修正や依存の更新だけの PR は省いてよく、時間の表の「週 5 本」もそれを除いた本数です。口頭の掘り下げは週に何本かを選んで行います(下の時間の表)。問いの型は上の 4 つから取っています。

欄新人が書くこともとにした型と原典
なぜこう書いたかいちばん迷った一行と、そう書いた理由。ほかに考えた書き方と、選ばなかった理由なぜを聞く(TOKIUM、Speee のトレードオフ)
変えたらどうなるか入力や条件が変わったら、どこが壊れるか変えたらどうなるかを聞く(フューチャー、GMO ペパボ)
どう確かめたか書いたテストと、テストで確かめていないこと先に正解の形を書かせる(ディップ)

AI に書かせた部分があっても、3 問に自分の言葉で答えられれば出してよいことにします。3 問の答えまで AI に書かせると書面では見分けられないので、週 2 本の口頭が抜き取りの確かめを兼ねます。

答えの判定の例

判定は PR ごとに 1 つです。レビューする人は 3 問それぞれの答えを「答えられた / 一部 / 答えられない」で見て、いちばん低いものをその PR の判定にします。次は編集部の架空の例です。PR は「注文の一覧に、期間で絞り込む機能を足す」、問いは「変えたらどうなるか」です。

判定答えの例(架空)そう判定する理由
答えられた終わりの日を始まりの日より前にすると、一覧は 0 件になり、エラーは出ません。始まりの日だけ入れると、その日以降の注文がすべて出ます。どちらも試しましたどの条件で、どこが、どう変わるかを自分で挙げ、確かめている
一部終わりの日を始まりの日より前にすると、おかしくなると思います。どうなるかは試していません条件は挙げたが、どこがどう変わるかは確かめていない
答えられないテストは通っています / AI が書いたので分かりません問いに答えていない

「答えられない」PR は、マージ(PR を本流に取り込むこと)を止めて差し戻し、理由を「理解していない」として数えます。週の口頭の枠は待たず、その日のうちに 10 分取って一緒にコードを読み、本人が答えを書き直してからマージします。「一部」のときは口頭で 1 問だけ足して聞き、答えられれば進めます。

使う時間の見積もり

EM がいちばん気にするのは、自分とメンターの時間です。編集部の提案する線は、3 問は毎回書く、口頭は新人 1 人につき週 2 本・1 本 10 分までです。新卒の人数ごとの週の時間は次のとおりです。

新卒の人数3 問を書く時間(新卒それぞれ)口頭の掘り下げ(週の合計)口頭を誰の時間として見込むか
1 人週 50 分20 分メンター 1 人
2 人週 50 分40 分メンター 1 人
3 人週 50 分60 分メンターが 2 人分(40 分)、ほかのレビューする人が 1 人分(20 分)

前提は、新卒 1 人の PR が週 5 本、3 問を書くのが 1 本 10 分、口頭が 1 本 10 分であることです。「答えられない」が出た週は、その PR 1 本につき 10 分を足します。メンター 1 人が持つのは新卒 2 人分までと仮に置きました。3 問の答えを読む時間は、ふだんのレビューに含めています。自社の数に置き換えてください。

新卒 2 人・メンター 1 人のチームの回し方です。メンターは週に 1 回、新卒 1 人につき 20 分の枠を取り、その週の PR から 2 本を選んで口頭で聞きます。選ぶのは、AI に書かせた部分が多い PR と、その新卒が初めて触った種類の変更です。ふだんのレビューと判定は、メンター以外の人がしてもかまいません。

緩めてよい合図

GMO ペパボでは、必須にしていた受講者同士のレビューについて、受講者から「PRを通じて講師側が身につけてほしいと考えていたスキルはもう掴めたので、ここから先は進捗を優先してレビューを任意にしたい」という提案があり、講師陣と合意して任意に変えました。全員が、昨年の半分の 5.5 営業日でチュートリアルを完走しています。原典は、任意にしたことと日数の因果を書いていません。

編集部の提案する目安は次のとおりです。3 問を書いた PR のうち「答えられた」が 3 週続けて 8 割以上なら、口頭を週 2 本から週 1 本に減らします。さらに 3 週続けば、口頭をやめて書面の 3 問だけにします。逆に、ある週に「答えられない」の PR が 2 本出たら、週 2 本に戻します。3 週・8 割・2 本は編集部が仮に置いた目安で、根拠となる記録はありません。決めるのはメンターと新人の 2 人で、決めたことを EM に伝えます。

反対の根拠

確かめる手順を重くしすぎることには、反対の根拠もあります。Microsoft・Accenture などでの 3 つの実地の無作為化実験(開発者 4,867 人)では、AI のコード補完で完了したタスクが 26.08% 増え、経験の浅い開発者ほど使う率も生産性の伸びも大きくなりました(Cui ほか、2025 年 2 月のワーキングペーパー版)。

この実験は理解を測っていません。Anthropic の実験は理解を測りましたが、52 人と少なく、課題の直後しか見ていません。生産性の伸びと理解の遅れのどちらが長く効くかは、まだ分かりません。

編集部の見立てでは、だからこそ AI を止めるのではなく、確かめる手順を上で決めた線(3 問は毎回書く、口頭は週 2 本・1 本 10 分まで)にとどめ、身についたら緩めるのがよいと考えます。

うまくいっているかを測る

ここも編集部の提案です。最初の 3 か月は、次の 3 つを記録します。

測るもの記録のしかたよくなっている合図
3 問に自分の言葉で答えられた PR の割合PR ごとの判定(上の決め方)をレビューする人が付ける「答えられた」の割合が月ごとに増える
レビューの差し戻しの理由差し戻しを「理解していない」「設計の方針に合わない」「書き方」に分ける「理解していない」が減る
原因を説明できた不具合新人が担当した不具合を直したあと、どの行がなぜ壊れたかを本人がコードを指して口頭で説明できたかを、レビューする人が「できた / できなかった」で付ける「できた」の件数が増える

3 つ目は、ジョブサポートの調査で新卒・若手(入社 1〜3 年目)に多かった反応(エラー文を読まずに AI に再質問を繰り返す、根拠を AI に丸投げする)の裏返しです。Anthropic の実験で差がもっとも大きかったのもデバッグでした。

半期の評価面談での使い方

ここも編集部の提案です。3 か月の記録(上の 3 つ)は、半期の評価面談に持っていき、何ができるようになったかを話す材料にします。「答えられた / 一部 / 答えられない」の判定は、そのまま査定の点数にはしません。

理由は 2 つあります。事実として、5 社の段階付けは研修の中のもので、Speee のルーブリックも受講者自身が付ける自己評価で、合否に使うとは書かれていません。評価制度に載せたと公開した会社も見つかっていません。そして編集部の見立てでは、点数にすると新人は答えを整えることに力を使い、「分からない」と言いにくくなります。それでは確かめる意味がなくなります。等級の要件に書くなら、「自分の PR の 3 問に、口頭の掘り下げも含めて答えられる」のように、できることの形で書き、達したかを面談でメンターと確かめるのがよいと考えます。

各社が配属後の記録を公開したら、この記事を更新します。

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