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新卒エンジニア研修の横断比較

青木大|2026. 09. 15

先に結論

  • 期間は1か月から4か月に集中している。もっとも多いのは3か月で、4月に始めて7月に配属する形が標準になっている。
  • 完全に外注している会社は1社も見つからなかった。判明した34社のうち併用が20社、内製が14社で、外部を使う場合もAWSやセキュリティなど特定の講座に限られる。
  • 分野で見ると、インフラが37社、Webが32社、データベースが30社、セキュリティが27社、テストが25社。セキュリティとテストを新人に教えている会社が3分の2近くある。

新卒エンジニア研修を設計するとき、最初に知りたいのは相場です。どれくらいの期間をかけるのが普通なのか。自分たちで作るのか、外に頼むのか。何を教えるのか。

各社がそれぞれ「うちの研修を公開します」という記事を出していますが、横に並べたものがありません。 そこで、公式に公開されている44社の記録を集めて、比較できる形にしました。

もとになっているデータは企業が公開するエンジニア研修資料の索引です。この記事の表はそこから生成しているので、各社が新しい年度の記録を公開すれば、この記事も追従します。

期間と、誰が作っているか

会社誰が作るか期間
GMOペパボ併用年度により異なる
リクルート併用約4か月のBootCamp(2026年度・2025年度)
サイボウズ不明約5週間(2026年度は4月23日から5月29日。講義実習4月23日〜5月19日、実践演習5月20日〜5月29日)
ピクシブ併用入社初日の4月1日から約2週間(2023年度は4月3日から14日の10日間)
サイバーエージェント不明約1か月(2021年度)
MIXI併用約1か月(2026年度版のZenn記事に記載)
Classi併用約 4 か月(2024 年度。4 月から 8 月上旬)
クラスメソッド併用年度で構成が変わる
ラクス不明2026年度は入社から実務まで約4か月(新入社員合同研修 4/1 から 4/10、技術研修 4/13 から 6/30 の約2か月半、配属後研修 7/1 から 9/11。配属後研修の期間は配属時の経験や知識で前後する)
Sansan内製研究開発部の開発研修は3日間(2023年は4月26日から28日、2024年は4月24日から26日)
ゆめみ内製iOS 研修は目安 1 か月(個人差あり。2021 年の公式記事)
ニフティ併用短期集中で5月末〜6月中旬(2026年度)
Speee併用2026年に公開した教材は学習時間の目安が96時間から144時間(週8時間で12週から18週の計画目安。受講実績に基づく標準時間ではないと明記)
アークシステム不明2026年度の新人研修アプリ開発は約3か月間
エクサウィザーズ併用3か月(2025年度の記事に明記。2024年度も4月に要件定義、5〜6月に開発・デプロイの3か月構成)
フューチャー内製人によって異なる(完全成果型で、節目のテストに合格しないと次のカリキュラムへ進めず、卒業時期に個人差がある)
セーフィー内製全体研修が約3週間、そのあと開発本部の新卒エンジニア研修が7月末まで(2025年度の記事に明記。実質4月〜7月の約3か月)
弁護士ドットコム併用約1か月半(2026年度。4月から5月で6月配属)
TOKIUM内製最初の1か月が全職種合同の全体研修(うち4日間がClaude Code研修)、5月からプロダクト本部でのエンジニア研修で1か月かけてRailsでTodoアプリを作る
FLINTERS併用3か月〜3か月半(2018年度は3か月予定で実際3か月半、2019年度は4月4日から7月12日、2021年度・2023年度・2024年度・2025年度も3か月)
万葉内製定めていない
freee併用全職種共通の全体研修が約2週間、そのあとにエンジニアとプロダクトデザイナー向けの開発研修
DeNA不明約3か月(FY25は4月下旬から7月末で、うち6月から7月の約2か月がプロダクト開発。FY22は4月18日から7月5日)
ドワンゴ併用エンジニア研修は約3〜3.5か月(4月中旬から7月末)
LINEヤフー不明統合後のLINEヤフーの新卒研修全体の期間は不明(「わかりやすい文章の書き方講座」は研修の1コマで、講座単体の所要時間も記載なし)
メドレー併用年度により異なる
ブレインパッド併用3か月(4月から6月、7月に本配属)
メルカリ不明DevDojoは毎年4月(新卒入社のタイミング)と10月に実施
クラウドエース不明2025年度は4月が社会人基礎研修、5月から6月末までが技術研修(Phase 1〜4)
ギフティ内製dev研修は2か月(2025年度)
ジーニー内製2か月
KDDIアジャイル開発センター内製約4か月(KAG の CHRO による 2024-09-04 の note。ビジネススキル研修が計17日間、その後テクニカルスキル研修と4〜5人チームでのプロトタイプ開発)
GMOインターネットグループ内製1か月(2025年度は6月実施)
SmartHR併用2025年度は4月から6月の3か月
ウィルゲート内製2024年度は内定者向けの全12講座(日数・時間は記事に記載なし)
コドモン内製エンジニア向け研修は2か月(5月・6月)
グッドパッチ内製全職種向けの新卒研修全体は約2か月から3か月(社会人基礎、カルチャー・制度理解、UX / エンジニアリング / 営業 / UI の職能別、模擬クライアントワーク)
LIFULL不明2020年度は約2か月(全職種合同の基礎研修2週間+エンジニア向け技術研修約1.5か月)
エムスリー併用2018年度は5月から7月にかけて12講義
NTTコミュニケーションズ併用5日間(2019年度のソフトウェアエンジニア向けコース)

期間が分かったのは40社、誰が作っているかが分かったのは31社です。期間は各社の記述の先頭の一文で、年度ごとに構成が変わる会社が多いので、正確なところは会社ごとのページで原文を見てください。

期間は1か月から4か月に集中している

並べると分布が見えます。もっとも多いのは3か月で、4月に始めて7月に本配属という形です。ブレインパッド、DeNA、エクサウィザーズ、FLINTERS、SmartHR がこの形でした。

次に多いのが4か月です。リクルートの BootCamp、Classi、KDDIアジャイル開発センター、ラクスがここに入ります。1か月から2か月の会社もあり、MIXI、サイバーエージェント、GMOインターネットグループ、ジーニー、ギフティ、コドモンがそうでした。

両端も見ておく価値があります。短いほうは、NTTコミュニケーションズのソフトウェアエンジニア向けコースが5日間、Sansan の研究開発部の開発研修が3日間です。どちらも研修全体ではなく特定のコースなので、単純に比較はできません。長いほうはメドレーの2019年度で、座学2か月にOJT4か月を足した6か月でした。

期間を決めていない会社もあります。万葉は「全ステップを完了した時点で修了」で、サポーターが新入社員のスキルと案件状況を見て設定します。フューチャーは完全成果型で、節目のテストに合格しないと次へ進めず、卒業時期に個人差が出ます。期間ではなく到達度で区切る設計です。

完全に外注している会社は1社もなかった

これがいちばん意外だった発見です。誰が作っているかが分かった34社のうち、研修を丸ごと外部に委託している会社は1社もありませんでした。

判明した34社のうち、併用が20社、内製が14社でした。併用のほうが多いのですが、中身を読むと外部に出しているのは限られています。 多いのは AWS の研修(AWS JumpStart、Architecting on AWS など)とセキュリティ研修で、それ以外は社内のエンジニアが講師を務めています。

具体例を挙げます。ドワンゴは設計も運営も日々のメンタリングも社内で、基礎研修の教材も自社サービスです。外部を使っているのは AWS の研修とセキュリティ研修に限られます。ブレインパッドは、外部講師を使ったのはビジネスマナーとミーティングマネジメントだけで、あとはすべて社内だと書いています。

技術顧問という形もあります。CARTA HOLDINGS は社内の講座に加えて、技術顧問による TDD 研修と読書会を置いています。

外注か内製かという二択ではなく、どの講座だけを外に出すかという設計になっています。研修会社の比較記事を読む前に、この事実を知っておく価値があります。

何を教えているか

分野ごとに、その分野の資料か記述を公開している会社の数です。

インフラ37社
Web32社
データベース30社
セキュリティ27社
テスト25社
AI24社
Git20社
ライティング14社
心構え14社
データ12社
モバイル11社

収録44社のうち、その分野の資料か記述を公開している会社の数です。同じ会社が複数年度で扱っていても1社と数えています。分類がつかないものを集めた「その他」は除いています。

セキュリティとテストを新人に教えている会社が3分の2近くある

インフラが37社、Webが32社、データベースが30社と続くのは想像どおりです。注目すべきはセキュリティが27社、テストが25社という数字でした。収録44社のうち、どちらも3分の2近くの会社が新人研修で扱っています。

セキュリティは、座学だけでなく演習の形が目立ちます。freee は PSIRT が運営する Hardening 研修として、チーム対抗で脆弱なサービスを2日間守る演習をしています。Speee は脆弱性のあるWebアプリを堅牢化したあと実際に攻撃して検証するワークショップを、新卒ではなく社内の全エンジニア向けに実施していました。Sansan は2026年の情報セキュリティ研修でCTFを行い、その中でAIの利用を許可しています。

AIが24社というのも、この1年か2年で起きた変化です。2024年度までは「機械学習」だった講義を「生成AI」に置き換えた会社があり、2025年度からは研修の目玉に据える会社も出ました。何をどう使わせているかはAIを新人に使わせるか、使わせないかにまとめています。

Gitが20社というのは、思ったより少ない数字でした。新人研修でGitを扱わないのではなく、公開する資料としては出していないということだと思います。社内の手順に踏み込みやすく、公開しにくいのかもしれません。

続いている会社

研修を公開することと、公開し続けることは別の話です。5年度以上ぶん公開している会社を並べます。

会社公開した年度の数最初の年度
GMOペパボ11年度2016
はてな11年度2012
リクルート10年度2017
サイボウズ9年度2018
FLINTERS9年度2017
ピクシブ7年度2017
freee7年度2018
サイバーエージェント6年度2021
MIXI6年度2021
DeNA6年度2020
Classi5年度2021
クラスメソッド5年度2022
Sansan5年度2020
万葉5年度2017
ドワンゴ5年度2019
LINEヤフー5年度2017
メドレー5年度2019

5年度以上ぶん公開している会社です。年度が飛んでいる場合も、公開が確認できた年度を数えています。

GMOペパボとはてなが11年度ぶん、リクルートが10年度ぶん、サイボウズが9年度ぶんです。10年前後にわたって毎年公開し続けている会社が複数あります。

続いている会社の記録は、年度をまたいで読むと設計の変化が見えます。 たとえばサイボウズは、2021年度から2024年度までは2か月から2.5か月でしたが、2026年度は約5週間に短縮しています。ニフティは2024年度まで機械学習だった講義を2025年度に生成AIへ置き換え、2026年度はチャットとして使うだけでなく開発のワークフローに入れる内容にしました。

1年分を読んでも分かりませんが、10年分を並べると、その会社が何を大事にしているかが見えてきます。

設計する前に確かめたい3つ

この比較から、自社の研修を設計するときに先に決めるべきことが見えます。

  1. 期間で区切るのか、到達度で区切るのか。 多数派は期間ですが、万葉とフューチャーは到達度で区切っています。期間で区切ると脱落者が出たときの扱いが難しく、到達度で区切ると配属の時期が読めません。どちらを取るかで運用がまるで変わります。
  2. どの講座だけを外に出すのか。 丸ごと外注している会社は1社もありませんでした。外に出しやすいのは AWS とセキュリティで、自社の事業と設計思想に関わる部分は社内で教えられています。
  3. セキュリティとテストを入れるか。 3分の2近くの会社が入れています。しかも座学ではなく演習の形が目立ちます。時間がないときに真っ先に削られる領域ですが、削っている会社が少数派だという事実は知っておく価値があります。

この記事について

この記事の表は索引のデータから生成しています。各社が新しい年度の記録を公開したら索引を更新し、この記事にも反映します。年度の更新は毎年夏に行います。

数字の扱いについて補足します。期間と体制は各社の記述から読み取ったもので、記述がない会社は集計に入れていません。分野は各社が公開した資料の内容から分類したもので、公開していないだけで実際には教えている可能性があります。「公開していない」は「やっていない」ではありません。

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